☆彡レーシックにおける保険金の給付ブログ:2019-12-31
結婚して落ち着いた頃、
珍しく親父から電話があった。
「そこの住所を言ってみて」
知らないはずは無いのに唐突に親父が言った。
「うん、確かに間違いない」と
電話の向こうで母との話し声が聞こえる。
「手紙を書いて送ったのに戻ってくるんだよ。
住所も間違いないし、どうしてなのか分からないから、もう一度投函してみる」
と言って電話が切れた。
数日後、新居のアパートの小さなポストに、
親父からの大きな茶封筒が在った。
無事に届いたじゃないの…と思いつつ封を切ったら、
中から封筒に入ったままの手紙が出てきた。
「宛先にたどり着けない」という旨の朱色のスタンプが
白い封筒に色鮮やかに押されてあった。
「戻ってきたその手紙を送りましたので、何が間違っているのか見てください」
とメモが貼り付けてあった。
しばらくその手紙の宛先を見つめている内に、
僕はおかしさがこみ上げてきて、たまらず声を出して笑った。
とてもおかしいのに、涙も出て止まらなかった。
僕の宛名が旧姓のままだったのだ。
この日、届いたのは新しい姓で宛名も書いてあったが、
戻って来たと言う手紙には旧姓で書いてあった。
親父と母はそこに気が付かなかったようだ
長い間付き合った姓、
愛着があるのは僕も同じだったが、
子煩悩な親父らしいと思ったり、
几帳面な母らしくないと思ったり…
手紙には僕が嫁いだ後の、親父の病状の事、
そして田植えや農作業の近況が細やかに書いてあった。
結婚には反対だったが、
僕の幸せを願い、最後には祝福してくれた。
旧姓のままの娘の宛名に
気が付かなかった親父と母に、
あらためて両親の気持ちを想い、遠く離れた事に気が付いた。